※注意

・主人公がギャル設定です
・名前ありのモブたち(みんなギャル)が出てきてしかもそれなりに出番多めです
・全体的にふざけています

ご了承いただけた方のみどうぞ


















































 


地震雷ギャル親父

 5月11日 (月)
 登校早々、なぜか竹刀を持って(!)校門の前に立つ真田を発見。何事かと思ったけど、どうやら風紀検査の日だったからっぽい。超強そう。マジ修羅みあって好き。
 そーっと横を通り過ぎようとしたけど、普通に一瞬で捕まった。そのまま頭のてっぺんからつま先まで、死ぬほど注意+説教。最悪。でも朝から喋れたからラッキー。(ちなみにそのあとチ×毛(自主規制)みたいな頭の男も捕まってた。いや、そいつ頭チ×毛なだけで別に何も違反してなくね? 何で!?)

 5月12日 (火)
 昨日は死ぬほど注意+説教されちゃったから、イメージ回復!
 真田的に髪とかメイクとかはあんま興味ないっぽいから、見えないところでアピるの巻。可愛らしさを意識して、ふんわり甘いコットンキャンディの香水をびっちゃびちゃにぶっかけて登校。そのまま授業に入ったけど、真田はそれが香水の香りだって気づかなかったのか「授業中に菓子を食ってる奴は誰だ!?」ってキレまくってた。本気で殺されるかと思ったから秒で洗い流す。マジただの異臭騒動。

 5月13日 (水)
 廊下ですれ違った謎の男から急に「おまんに真田は無理ぜよ」とか言われた。誰あいつ。坂本龍馬? みたいな喋り方しやがって。くそ萎え。

 5月14日 (木)
 テニス部の練習を(勝手に)見に行く。みんなは仁王何とかや丸井何とかに対してぎゃーぎゃー騒いでたけど、あたしはもちろん真田をガン見。だけど、せっかく見に行ったのに近くにいたつるっぱげの頭が超光ってていまいちよく見えなかった。ってゆーか今気づいたけど仁王何とかって昨日の奴じゃん!? 何で知ってんの!? 怖すぎ。

 ……我ながらひどい。ひどすぎる。けど、これがこの一週間のあたしと真田の恋の記録。
 これを見てのとおり、あたしと真田は何につけても真逆のタイプだった。何て言うか、そもそもの種族からして違う。そのせいか、ちらりと目が合っただけで何か嫌そうな顔されるし、勇気を出して話しかけたところで最終的には(なぜか)いつも怒られる。だけど、あたしは真田が好き。大好き。普段はいい加減なあたしでも、真田への想いだけは本気だ。
 5月15日、決戦の金曜日。あたしはこの時間にすべてを賭けていた。
 五、六限ぶち抜きの選択科目(家庭科)にて、ほとんど女子のみで行われる調理実習。今日作るのは、炊き込みご飯と各班好きな具材の味噌汁だ。あまりにもおふくろメニューなせいでブーイングもあったっぽいけど、あたし的には断然こっちの方がいい。
 なぜかって? だって真田でしょ? クッキーとかマフィンとかの甘いものより、炊き込みご飯と味噌汁の方が喜びそうじゃん!


「はい、それでは手順どおり調理に取り掛かって下さい。わからないことは聞きに来て下さいね」

 家庭科のおばあちゃん先生の言葉を皮切りに、調理実習は開始された。愛しの真田は書道? だか何だかでいないとわかっていながらも、わざわざこの日のために用意したどっピンクの豹柄エプロンで気合いを入れる。
 班員は、あたしを含めて四人。リナ、モモ、そしてハルカだ。

「つーかマジ炊き込みご飯って何だし、くそウケるんだけど」
「ヤバ、何か木みたいなの(※ゴボウ)あるんだけど!? 何これ、具材!? 大丈夫!?」
「絶対食えねーだろ! つーか木ー食わされるとかマジ虐待じゃん!?」

 ……げらげらと笑いながら死ぬほど頭の悪い会話をしているけど、普段から仲のいい最強の親友たちだ。もちろん、あたしの真田への想いも知っている。初めて打ち明けたときの第一声こそ「うそでしょ!?」とか「いや、ジャンルちがくね?」とかだったけど(しかも、半笑いで。マジ失礼)、本気度合が伝わったのか、今となっては普通に協力までしてくれている。もはや、親友を通り越して心友。むしろ神友だ。

「で、予定どおり味噌汁はに任せちゃっていいの?」
「うん! あ、もちろんそっちも手伝うつもりだけど」
「あー、なめこだっけ? 真田の好物」
「、」

 モモの一言に、ボッと顔が赤くなる。そう、あたしがこの調理実習に賭けていた理由は、真田の好物であるなめこの味噌汁を作れる絶好の機会だったからだ。(持ってきた具材はもちろんなめこだし、味噌もちゃんとそれに合うように赤だし味噌にした)
 普段はびっくりするくらいあたしに冷たい真田だけど、せめてこの味噌汁をきっかけに、ちょっとでもどうにかなりたい。そんな思いから、自ら味噌汁の担当を買って出たのだけど。

「ヤバ、めっちゃ顔真っ赤じゃん! 乙女かよ、かっわいいなあ」
「真田のためにすげえうまい味噌汁作ってやんなね!」
「木はうちらに任せな! なめこも万が一が忘れてたらと思って一応予備持ってきてっから!」
「げ、待ってなめこってそれ!? うちの絶対ちがくね!?」
「別にいんじゃね? 同じきのこだし入れとけば。具だくさんで逆に真田も喜ぶべ」
「!?」

 わざわざ予備のなめこを大量に用意してきてくれたハルカ。ただのうっかりミスのくせに、なぜかどや顔でしめじを抱えるモモ。そして、同じきのこだしすべてぶち込めなどと言うリナ。
 ……神友たちの協力は、思った以上にありがたいものだった。三人の笑顔がとても眩しい。あまりにも眩しすぎるせいで、あたしの脳内には既になめこ(としめじ)の味噌汁が百杯分ぐらい出来上がっていた。

「うむ、よく出汁が効いている。たまらん味噌汁だな! うまいぞ!」
(ひゃーっ!?)

 あの男らしさ溢れる大きな手に持たれる汁椀。育ちの良さが滲み出ている美しい箸さばき。そして、凛々しい笑顔。全部妄想とは言え、考えただけでたまんない。

「ねえ……ちょっとどうしよう求婚されちゃったら!?」
「いや百パーされるっしょ」
「うちら結婚式でくっそ泣きながら安室ちゃん歌うから!」
「うわ、それめっちゃ感動するじゃん!」

 妄想はさらにエスカレートし、最終的にはとうとう脳内結婚式まで挙げていた。幸せいっぱいのあたしの隣には、愛しの真田。そして、あたしたちの門出のために泣きながら安室ちゃんを歌ってくれる神友三人の姿。……ヤバい、最高に楽しくなってきた。

「ちょっともうさ……あたしマジで頑張るから! 味噌汁は任せて!」
「オッケー! うちらはとりあえず木ー切っとくから!」
「木ー切るとかウケるよね、きこりでもねーのに」
「つーかこれ切れんの? のこぎりとか持ってきた方がよくね?」
「……」

 ぶっちゃけ炊き込みご飯に関しては色々と心配な面もあったけど、あたしは真田と、そして神友たちとの未来のために(?)張り切って味噌汁作りに取り掛かった。(どうでもいいけどなめこってめっちゃぬめぬめするんだね!? あーん、マジキモいよー!)


「……うん、おいしい!」

 数十分後。ふつふつと湯気が立つ鍋からは、最高においしそうな赤だしの香りがふんわりと漂っていた。最初はぬめるのキモすぎて泣きそうになったけど、満を持して完成したなめこ(としめじ)の味噌汁。見た目よし。味よし。真田への愛情よし。とりあえず、初めてにしてはなかなか上出来だ。

ー、うちらのもできたよ!」
「やべー、炊き込みご飯作れるとかうちら天才じゃね?」
「だあね、マジミシュラン載れるべ」

 結局手伝えなかったけど、少し遅れてリナたちの炊き込みご飯も完成したようだった。一時はどうなるかと思ったけど(だってほら、ゴボウのこと木とか言ってたし……)、炊飯器の中にはふっくらとおいしそうなご飯が見事に炊きあがっていた。ゴボウ、にんじん、鶏肉、油揚げ。のこぎりではなく(!)、きちんと包丁で切ったそれらもいい感じに混ざり合っている。こちらも見た目よし。味よし。最高の出来だ。

「とりあえずあとちょっとで一応休み時間だし、真田呼んでこよ!」
「ありがとう……。けどよくよく考えたら昼休み後だし、お腹いっぱいかも……。食べてくれるかな? 真田」
「いや、余裕でいけるっしょ! 運動部だし食いそーじゃん!」
「そそ! 何かぶりぶり言ってきたら無理矢理口に突っ込んじゃえばいいよ!」
「ううっ、み、みんな……!」

 神友三人のありがたい協力。そして、そのおかげもあって予想以上においしくできてしまっていた炊き込みご飯と味噌汁。
 ……多分、このときのあたしは、感激を通り越して少しだけおかしくなっていたのかもしれない。

「本当にありがとう! 真田のことはもちろん大好きだけど、うちらの友情も永遠に不滅だからね!」
「いいっていいって! 食ってくれるといいな真田! いや食わせるけど普通に」
「むしろ実質ウェディングケーキっしょ! と真田の」
「! 待って、超いいこと考えたんだけど! どうせなら米土台にしてケーキっぽくしたらいんじゃね?」
「え?」

 今まさに、真田のための炊き込みご飯を盛りつけようとしていたそのとき。……神友たちの発言によって、しゃもじを握ったままのあたしの動きはぴたりと止まっていた。
 は? ウェディングケーキ? 何それ。

「確かに! あ、でも炊き込んじゃったから微妙に茶色だけど……どーする?」
「いや、普通にチョコケーキ設定でいけるべ!」
「やっべ、リナ頭良すぎじゃね? マジハーバードレベルじゃん!」
「どうよ?」
「……」

 ……どうしよう。あたしの自慢の神友たちは、本当に天才かもしれない。

「もう、そんなの決まってるじゃん……超採用!」
「っしゃ! んじゃ早速ケーキ(?)作ろ!」

 テンションのメーターはとっくに振り切っていた。塗装がはげまくった古いおんぼろ茶碗を、かろうじておしゃれっぽく見える白くて大きなお皿に取り替える。そして、そのまましゃもじを巧みに使い大量の炊き込みご飯を盛った。ぺたぺたと形を整えつつ、思い切って二段重ね。ヤバい、二段にしたらめっちゃウェディングケーキ感出てきた。

「ねー! 他の班の子たちがわかめとか豆腐とかくれたよ!」
「うっそ!? かざるかざる!」
「うちらの木もまだ余ってる!」
「やった! 刺しとく刺しとく!」
「おー、何か色味増えていい感じじゃね?」
「ヤバ、デコってくの楽しいかも!」
と真田のウェディングケーキだからな! うんと派手にしてやろうぜ!」

 お皿の周りはわかめでふち取り。さまざまなポイントに豆腐。てっぺんには、次々とぶっ刺されていくゴボウ。
 こうして、ウエディングケーキという名の炊き込みご飯は本来の姿をなくし、あたしたちの手によって可愛く、そして派手にデコられていった。


「お待たせ! 真田呼んできたよ!」
「ほら、入って入って!」
「おい、一体何の用だ? こんなところに呼び出して……」
「(きゃっ!? ききききき、来た!)」

 ウエディングケーキが完成し、待つこと数分。
 廊下側の扉ががらりと開くと同時に、モモとハルカにぐいと背中を押された真田が家庭科室に入ってきた。女子だらけの空間に戸惑っているのか、少しきょろきょろしている。もう、本当に愛しい。大好き。

「さ、真田!」
「む……何だ? 

 すうと深呼吸をしたあと、意を決して名前を呼ぶ。この豹柄エプロンのせいかやっぱりちょっと嫌そうな顔されたけど、なるべく気にしないようにした。
 だって、今から差し出すそれを見たら、真田の気持ちだって変わるに違いないから。あたしはもじもじとはにかみながら、ゆっくりと真田にその思いを伝えようとした。

「あの、今日調理実習だったでしょ?」
「うむ、家庭科はそうだったらしいな。……だが、それがどうかしたのか?」
「その……実はなめこのお味噌汁作ったんだけど」
「、」
「(え)」

 そこまで言い切ったあと、思わず目を疑った。なぜなら、あたしの勘違いじゃなければ真田の表情がほんの少しだけ明るくなった気がしたからだ。(え、マジで? なめこの力すごくない!? ってゆーかそんなに好きなの? やだ、きのこ相手だけど嫉妬しちゃうじゃん!)

「ほう、なめこか! それはいい具材を選んだな」
「! でしょ? あ、お味噌汁だけじゃなくて炊き込みご飯もあるんだけど……その、よかったら是非真田に食べてもらいたいなって思って」
「む」
「(!? えっダメ? やだやだやだ! ここまできて? お願い! このエプロンが気に入らないなら外すから!)」
「……そうか。どれ、そういうことなら遠慮なくいただくとしよう」
「!?」

 ……やっぱり、勘違いじゃない。確定だ。たとえなめこの力だとしても、今までにないその反応。そして何より、初めて向けられたと言ってもいいその笑顔に、思わず泣きそうにさえなる。

「え……ほ、本当に食べてくれるの!?」
「? ああ。せっかくの機会だしな。それに、なめこの味噌汁は好物だ」
「(きゃーっ!? ダメ、心臓爆発しそう!) ほほほ、本当に本当に? 嬉しい! そしたらこれ……その、が、頑張って真田のために作ったから!」

 愛情と友情。すべてを兼ね備えた、あたしたちの最強のウェディングケーキ。と、なめこ(としめじ)の味噌汁。感極まったあたしは、それをそっと真田の目の前に差し出した。脳内BGMは既に、神友三人が歌う安室ちゃんになっている。ああもう、ダメ。今すぐあたしとキャンユーセレブレイト!? って感じ!

「!」
「? (……あれ?)」

 真田の表情が、みるみると変わっていく。いや、それは予想どおりだったんだけど……どっちかって言うとこう、悪い意味で。唇には死ぬほど力入ってるっぽいし、眉間にはめっちゃ皺が寄ってってる。もちろんいつもどおり格好いいけど、鬼みが増してるって言うか何て言うか。
 ……どうしてだろう。たった数秒前までは死ぬほどハッピーだったのに、何だかめちゃくちゃ嫌な予感がしてきた。


「は、はいっ!?」
「このたわけ者が! 食べ物で遊ぶとは何事か!」
「!? ええーっ!? う、うっそ!?」

 何と言うことだろう。あたしは求婚されるどころか、いきなり怒鳴られていた。ビリビリと、全身の毛が猫のように逆立つ。あまりの大声にめっちゃビクッとなった。(嘘でしょ? 死ぬほど愛情込めて作ったのに!? どこ? どこ見て遊んでるって思われたの!?)
 色々とデコりまくった炊き込みご飯のケーキがいけなかったのか、それとも、なめこの味噌汁にしめじまで入れちゃったのがいけなかったのか、理由はわからない。けど、わからないからこそショックがデカすぎる。マジで求婚一歩手前までいってたのに。何で?
 ……そう、さっきとは違う意味で泣きそうになっていたそのとき。

「おい真田! それはねえだろ!」
「むうっ!? な、何だお前たちは!」
「(ぎゃっ! リ、リナたち!?)」

 真田以上の鬼の形相で飛び出してきたのは、大好きな三人の神友たちだった。
 今の今までずっと静かに見守ってくれていたからこそ、もちろんあたしのためを思っての行動だろう。けど。
 声の大きさ、口調の強さ、そして迫力。真田もなかなかだけど、この三人も負けていない。と言うより、口喧嘩だったらこの三人の方がよっぽど強い気がする。すっかり火が着いてしまった三人は、真田に対して思わず耳を塞ぎたくなるような罵詈雑言を浴びせまくっていた。

「つーかさっきからむうむうむうむううっせーんだよ!」
「そもそも遊んでねえし! こっちはとお前のために超真剣に作ったんだからな!?」
「マジ女心全然わかってねえな! とうちらの愛情踏みにじりやがって! お前そんなんだから童貞とかコールされんだべ!」
「(ひ、ひえ……)」

 鍋や茶碗がひっくり返らなかったのが、まるで奇跡だとさえ思った。
 けんかをやめて。四人をとめて。あたしのために争わないで。もうこれ以上……。
 阿鼻叫喚と化した家庭科室で、思わずそう口ずさみそうになる。けど、それでこの喧嘩が終わるなら苦労しない。リナたちが一旦こうなると誰にも止められないということは、仲のいいあたしが一番よくわかっていたから。迫りくるギャル軍団の勢いに、さすがの真田もたじたじだ。

「もういーし! 普通にうちらで食お!」
、ダメだよこの男! やめときな! DVだよDV! 本当最悪!」
「オラッ! もういーからさっさと書道室戻れよ!」
「!? ええいっ! 人を呼びつけておいて何だその言い草は! って、おい! まだ話の途中だぞ! 扉を閉めるな! 人の話はきちんと最後まで聞か」(ピシャッ!)

 ……入ってきたときとは一変、真田は無理矢理外につまみ出されてしまっていた。家庭科室の扉が、乱暴な音を立てて閉められる。しばらくは「開けろ! 開けんか!」と外側から扉を叩く音が続いたけど、休み時間の終了を知らせるチャイムが鳴ったことから、生真面目な真田は諦めて書道室に戻っちゃったっぽい。
 ……いや、ぶっちゃけもうウエディングケーキと味噌汁どころじゃないけど、何これ。これで終わり? なめこの味噌汁にした意味ないじゃん!

(反省会)
「うう……。やっぱしめじがいけなかったのかな?」
「いや、関係ねーべ! なめこだろうがしめじだろうが同じきのこじゃん!」
「ケーキに木とか刺したからじゃね? くそっ、やりすぎたか……」
「どっちにしろひっでー男だよ! あー、ない。マジ今日で真田の株だだ下がったわ!」



(2020/05/31)